マウリツィオ・ポリーニ ハイレゾ音源やSACDの代表作は?

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マウリツィオ・ポリーニ死去 82歳

現代を代表するピアニストのマウリツィオ・ポリーニが2024年3月23日に亡くなりました。82歳でした(1942年1月5日生まれ)。彼は、20世紀後半と21世紀初頭を代表するピアニストの一人であり、その卓越したテクニックと音楽性で世界中の聴衆を魅了しました。

マルタ・アルゲリッチと並んで、世界の現役ピアニストの横綱と言える人が亡くなったわけであり、ひとつの時代の終わりを感じずにはいられません。

ポリーニと録音

マウリツィオ・ポリーニはデビュー初期のわずかな録音(EMI)以外は一貫してドイツ・グラモフォンに所属し、録音史に残ると言われる録音を数多く残しました。もっとも有名なものは1972年のショパン:練習曲集全曲でしょう。ここで聴ける、それまでにないような完全性の高い技術と、大理石のようとたとえられる硬質な音色はいまだに多くの人に衝撃を与え続けています。

ポリーニはクラシック音楽界の有名ピアニストであるだけに、オーディオ愛好家からしてもピアノ録音の主要な演奏家として聴かれていたことでしょう。

マウリツィオ・ポリーニ ハイレゾ音源やSACDの状況

それだけに、ポリーニの録音の少なくない数がハイレゾやSACDになっています。ポリーニのこうしたハイレゾやSACDで彼の演奏を偲ぶとともに、今後も長く聴き継がれていくことも確信できます。

ポリーニは同時代に活躍したアシュケナージやブレンデルなどと比べると、ピアノの中心レパートリーを体系的かつ広範囲に録音することはせず、自分で納得できる演奏をじっくりと演奏・録音してきたこともあり、名声の割には録音が少し多くはないきらいがあります。もっとも、高い実力と名声があっても、完璧主義的な考えや自己批判の強さから演奏・録音が少ない大物ピアニストはミケランジェリなどもいるので、珍しいことでもありませんが。

ポリーニの演奏でハイレゾ化されるものは、1970年代のアナログ録音期のものと2000年代以降のハイレゾで録音されたものに基本的にはなります。そうなると、高度な技術的達成と音楽性を両立していた、まさに全盛期と言える1980年代の録音はマスター自体が16bit/44.1kHzということもあり、残念ながらハイレゾ化の恩恵がありません。

ポリーニの演奏は1992年ごろから身体的問題があったためなのか(発表されてはいませんがこのころになんらかの事故、故障があったと言われています)、技術的完成度と持ち前の音色・タッチの双方で衰えが起こり始めていたと感じています。そしてその衰えはさらに進行し、2010年代以降は技巧派ピアニストというのは過去の幻影となっている状態でした(だからとって表現力などは十分にあるのでピアニストとしては成り立っていましたが)。

それは人間である以上仕方ないところですが、彼の全盛期の演奏をハイレゾで堪能できない点と、技術的な衰えが隠せない近年の演奏をハイレゾで鑑賞できることで彼の後世への評価が影響してしまうのかと思うと何か複雑です(ショパンのピアノ・ソナタ第3番に1980年代と2018年の両方の録音があるのが象徴的)。

とにかく、クラシック音楽愛好家にも、オーディオ愛好家にも、彼のアナログ録音期のハイレゾ音源と、ハイレゾでなくとも1980年代の録音も聴いて欲しいところです。

ポリーニによるショパン:練習曲集全曲のハイレゾ・SACDを紹介

ポリーニの録音を代表するだけでなく、すべてのピアノ録音を代表する1つと言っていいマウリツィオ・ポリーニによるショパン:練習曲集全曲のハイレゾ・SACDを演奏・録音の両面から解説します。

演奏

マウリツィオ・ポリーニによるショパン:練習曲集全曲のアナログ・セッション録音は、1972年に録音され、1973年にドイツ・グラモフォンレーベルでリリースされました。この録音は、ポリーニの卓越したテクニックと音楽性、そしてショパンへの深い理解が結実した名演として、高く評価されています。

テクニック・音色・タッチ

ポリーニは、練習曲集全曲に要求される様々な技巧を完璧と言えるほどにマスターしており、軽快なパッセージから力強い音色まで、幅広い表現力を見せつけています。特に、第1番や「木枯らし」などの難曲においては、圧倒的で強靭なテクニックで聴衆を魅了します。また、磨き上げられた大理石を思わせるような、やや硬質でクリアな音色と、タッチも均質で比類ないほどに完成されており、感覚を超えて官能に訴えるような美感を備えています。

音楽性

ポリーニは、練習曲集全曲を単なる技巧の練習曲ではなく、深い芸術性を備えた高度な音楽作品として演奏しています。各練習曲に込められたショパンの想いを深く理解し、ときに情感豊かな演奏で聴衆の心を動かします。特に、「別れの曲」「革命」などの抒情的な曲においては、ポリーニの美しい音色と繊細な表現力が存分に発揮されています。

ショパンへの理解

ポリーニは、ショパンの音楽を深く理解しており、練習曲集全曲を通してショパンの音楽世界を表現しています。各練習曲の背景や作曲年代などを考慮した演奏は、ショパンの音楽に対するポリーニの深い愛情を感じさせてくれます。

音質

この録音は、ミュンヘンのヘラクレスザールで録音され、録音エンジニアはハインツ・ヴィルトハーゲン。当時のドイツ・グラモフォンらしいクリアで自然な音質が特徴です。ピアノの響きが鮮明に収録されており、ポリーニの繊細な表現まで聞き取ることができます。また、低音域はやや弱いながらもしっかりと録音されており、練習曲集全曲に要求される力強い音色も十分に楽しめます。

まとめ

マウリツィオ・ポリーニによるショパン:練習曲集全曲の録音は、演奏・録音の両面において発売時から現在に至るまで非常に高い評価を得ている名盤です。ポリーニの卓越したテクニックと音楽性、そしてショパンへの深い理解が結実した演奏は、リスナーを魅了し続けています。

この録音は、ショパン:練習曲集全曲を聴くための最適な選択肢の一つです。ハイレゾ音源やSACDで聴けば、さらにクリアで自然な音質を楽しむことができます。

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