D&M製外販用SACDドライブメカが生産終了
オーディオ愛好家にはおなじみのD&M(ディーアンドエムホールディングス・国内でDENONとmarantzのオーディオブランドを展開)が、外部販売用のSACDドライブメカニズムの生産終了・販売終了を行うという驚きのニュースが報道されています(2024年7月末時点の受注をもって生産終了)。
デジタルオーディオ機器の進化が驚異的なスピードで進行しています。その中で、SACD(スーパーオーディオCD)プレーヤーは長らく高音質を追求するオーディオファンに愛されてきました。
しかし現在、世界的に外部販売用のSACDドライブメカニズムを供給しているのはD&Mくらいしかないらしく、ほかの手段があるにしても(TEACあたりになんとかしてもらう?)、オーディオ機器としてのSACDプレーヤー自体の存続の危機になると言えるかもしれません。
国内メーカーでも、SOULNOTEは、発売中のSACDプレーヤー「S-3」と「S-3 ver.2(Reference)」について、使用しているSACDドライブメカが、D&Mとは明かしていないものの、供給元において2024年7月末で受注終了となるため生産終了するとしており、このニュースと符号した内容で影響が出てきています。
D&M製外販用SACDメカの生産終了の理由や、今後のSACDプレーヤー業界全体の展望を考察してみます。
D&M製SACDメカとは
基本情報
D&M製SACDメカとは、DENON(デノン)やmarantz(マランツ)などのブランドで知られるD&Mが製造しているスーパーオーディオCD(SACD)対応の読み取りメカニズムのことを指します。このSACDメカは、高音質な音楽再生が求められるオーディオファイルや音響マニアにとって、非常に重要な役割を持っています。D&M製のSACDメカは、その高い信頼性と優れた音質性能で業界内外から高い評価を受けてきました。
主な特徴と性能
D&M製SACDメカの主な特徴として、まずその高解像度音質と細部まで追求された再生技術が挙げられます。SACDは通常のCDよりも情報量が多く、高音質で再生できるフォーマットです。このメリットを最大限に引き出すために、D&Mのメカニズムは精密なレーザー読み取り技術と高度なデジタル信号処理技術を採用しています。
さらに、D&M製SACDメカは耐久性にも優れており、長時間の使用でも安定したパフォーマンスを維持することができます。また、振動や外部ノイズの影響を最小限に抑えるための設計が施されており、より純粋な音楽体験を提供します。これらの特性により、D&M製SACDメカは世界で多くのオーディオメーカーに採用され、広く愛用されているのです。
生産終了の背景を考察
光ディスクプレーヤー全体が凋落傾向
光ディスクプレーヤー全体の市場が凋落傾向にあることが、D&M製外販用SACDメカの生産終了の一つの理由と考えられます。かつては家庭用エンターテインメントの主力だった光ディスクメディアですが、ストリーミングサービスやダウンロードコンテンツの普及によって、光ディスクの利用が大幅に減少しています。これにより、光ディスクプレーヤーの需要も減少しており、大手メーカーも生産コスト削減のため製品ラインの整理を余儀なくされているのです。
市場の変化 もともとニッチだったSACDプレーヤー市場の縮小
1999年に製品が登場したSACD(Super Audio CD)プレーヤーは、もともとニッチな市場向けの製品でした。高音質を求める一部のオーディオファイルには支持されてきましたが、一般的な消費者層には全くと言っていいほど広がらず、市場規模は大きく拡大することはありませんでした。オーディオマニアック向けの製品とは販売規模が桁違いの、SONY PS3の初期型にSACDプレーヤー機能があったにも関わらずです。
さらに、ここ数年で音楽リスニングのトレンドがオンラインストリーミングやハイレゾ音源のダウンロードへとシフトしてきたため、SACDプレーヤーの需要は一段と縮小しています。こうした市場の変化が、D&M製外販用SACDメカの生産終了の一因となっています。
技術の進化でディスクレスオーディオに移行
技術の進化により、オーディオ機器もディスクレスの方向へと確実に変化しています。ハイレゾ音源やFLAC、DSDなどの高音質ファイルをデジタル化して再生する環境が整い、これまでディスクメディアに依存していたソースも次第にファイル再生に移行しています。その結果、光ディスクプレーヤーの必要性が低下し、D&M製のようなSACDメカの需要も減少しています。これがまた一つの生産終了の背景となっていることでしょう。
コストと経済性の問題
生産コストや経済性もまた、D&M製外販用SACDメカの生産終了の理由として考えられます。光ディスクプレーヤーの需要減少に伴い、少量生産ではコストが高くつき、利益を出しにくくなります。また、部品調達や製造ラインの維持にも多くのコストがかかります。ここ数年の大幅なコスト増や為替の影響もあるに違いないですし。
特に、SACDプレーヤーのようなニッチ製品では大量生産が難しいため、効率的な生産ができなくなります。こうした経済的な圧力が、生産終了の決断を促したと言えるでしょう。
SACDプレーヤーの未来を予想
供給を受けていた各メーカーの対応は?
D&M製外販用SACDメカの生産終了の理由が明らかになると、供給を受けていた各メーカーは迅速に対応策を講じる必要があります。一部のメーカーは既存の在庫を活用して短期的な対応を図るかもしれませんが、長期的には新たな供給元を探すか、もしくはSACDをサポートしない新しい製品ラインにシフトすることが考えられます。また、自社でメカを内製化する動きも見られるかもしれません。
D&M自身のブランドではSACDプレーヤーは継続する?
D&M自身のブランドでは、外部供給を停止してもしばらくの間は自社製のSACDプレーヤーを継続する可能性が高いでしょう。消費者からの高い要求とブランドイメージを維持するために、独自の技術とリソースを活用して製品のラインアップを維持することが期待されます。高音質を求める層に対して、依然としてSACDは一定の価値があるだけに。
次世代ディスクオーディオフォーマットは出ないでしょう
SACDはハイレゾ音源としてはDSD 2.8MHz同等であり、DSD音源ファイルが5.6MHzや11.2MHz品位も当たり前になっている現在では、性能不足の感もあります。だからといって、さらなる次世代ディスクオーディオフォーマットの登場は、現状のトレンドからすると期待薄です。ストリーミングサービスやデジタルファイル再生の普及により、物理ディスクはますます時代遅れとなりつつあります。新しいフォーマットを開発するコストも高く、需要も限られているため、業界全体としても新しいディスク形式に投資する動きは考えにくいです。
ユーザーの反応
D&M製外販用SACDメカの生産終了に対するユーザーの反応はさまざまでしょう。長年の愛好者やオーディオファンからは失望の声が上がるかもしれません。一方で、ストリーミングやデジタルオーディオへの移行を既に進めているユーザーにとっては、それほど大きな影響はないかもしれません。ただ、これまでのSACDプレーヤーの維持や修理を求めるユーザーも一定数存在するでしょう。
レコードやカセットテープなどのように細々とどこかで継続?
SACDプレーヤーは、レコードやカセットテープのようにニッチな市場として細々とでも継続される可能性があります。特定の熱心なファン層やオーディオマニア向けには需要が残るでしょうか。限定的な生産や特別なイベントでの販売など、特定のマーケットを狙った戦略が取られるかもしれません。
折しも、中国メーカーのSHANLINGが、SCD1.3というSACDプレーヤーを発売します。価格も手ごろ(約22.7万円)で機能も豊富(DACやネットワークオーディオ、プリアンプ、ヘッドホンアンプ)で、既存のSACDユーザーにもアピールできそうです。ここでも中華メーカーの隆盛が起こるのでしょうか?
MDやDATのように絶滅?
別の可能性として、SACDプレーヤーがMDやDATのように市場からほぼ完全に姿を消すというシナリオも考えられます。既にオンラインストリーミングやデジタル形式の音楽再生が主流となっているため、物理メディアの需要がさらに減少すれば、SACDプレーヤーも絶滅に向かう可能性は否定できませんね。
中古市場や修理業者の活性化が予想
SACDプレーヤーの新製品が減少しても、中古市場や修理業者が活性化する可能性があります。特に、高価なプレーヤーを購入したユーザーは長期的な使用を意図しているため、修理やメンテナンスの需要が高まるでしょう。中古市場でもプレミアム価格がつく製品が出てくるかもしれません。相当昔のアンプやスピーカー、プレーヤーなどの中古市場でわかるように、オーディオ業界にはこうした動きを許容するだけの下地があるだけに。
まとめ
D&M製外販用SACDメカの生産終了は、光ディスクプレーヤー全体の凋落や市場の変化、技術の進化によるディスクレスオーディオへの移行、そしてコストと経済性の問題が複雑に絡み合った結果と考えられます。そのため、SACDプレーヤー業界全体の展望についても深く考察する必要があります。
供給を受けていた各メーカーは、生産終了に対応するための新たな戦略を打ち出す必要があります。D&M自身のブランドがSACDプレーヤーの継続を検討するであろう一方、次世代ディスクオーディオフォーマットの登場は期待されておらず、ユーザーの反応もさまざまです。レコードやカセットテープのように細々と継続する可能性もあれば、MDやDATのように絶滅するリスクもあります。
一方で、中古市場や修理業者の活性化が予想され、特に愛好家にとってはSACDプレーヤーの価値が見直される機会となるかもしれません。最終的には、ユーザーの需要と市場の動向がSACDプレーヤーの未来を左右することになるでしょう。
私自身、SACDプレーヤーが手元にありつつも、このところ全く使っていませんでした。一方、DENONのCDプレーヤーのDAC部分を利用してハイレゾ音源を聴いていたりするので、オーディオにおける時代の変化を身を持って感じつつも、何とも言えない感慨を覚えます。
コメント
中身が無い
コメントありがとうございます。
私も長年、デノンのCDプレーヤーを使っている身ではありますが、あくまで一コンシューマーということもあり、
とくに専門的な知見であったり、業界内部の情報などがあったりするわけではありません。
表に出ている報道や少ない経験などから勝手に推察や考察しているだけの記事なので、
私の考察力や表現力の拙さから、読者の方にあまり参考にならない記事だったかもしれません。
それでも、コンシューマーや愛好家目線の下手の横好きがネットで発信できるのも今の時代だと思うので、
どうか温かくお見守りいただければ幸いです。