DENON PerL Pro(AH-C15PL) 完全ワイヤレスイヤホン
DENON(デノン)の完全ワイヤレスイヤホン・PerL Pro(AH-C15PL)は2023年7月に、発売当初の実売価格約5.7万円で発売。本機の内容紹介と、各種レビュー・評価から本機の実力を分析・考察します。
DENON PerL Pro(AH-C15PL) 内容・特徴
医療技術を応用したサウンドパーソナライズ機能を搭載した完全ワイヤレスイヤホン。パーソナライズ機能として「Masimo AAT(Adaptive Acoustic Technology)」を搭載。医療機器を展開する企業「Masimo Corporation」の有する、新生児の難聴検査に用いられる医療技術を応用。
クアルコム「Snapdragon Sound」に対応し、44.1kHz/16bitをロスレスで再生できるaptX Losslessをサポート。加えて最大96kHz/24bitまで対応のaptX Adaptiveや、aptX/AAC/SBCのコーデックをサポート。
また、一般的なマイク機能の場合、通話音声のサンプリング周波数は16kHzまでですが、本機では2倍の32kHzまで高めたaptX Voiceをサポートし、より自然な通話音声を届けるとアピール。反応速度48msの低遅延再生も可能なため、「そこまで音にシビアでないゲームなら充分違和感なくプレイできるのでは」とされています。
ドライバーは専用に開発されたという10mm径の3レイヤー・チタニウム振動板ダイナミックドライバーを搭載。音決めは同社のサウンドマスター・山内慎一氏が行っており、「パーソナライズ機能とあわせ、デノンのVivid & Spaciousサウンドを狙った通りにお届けする」としています。
周囲の騒音レベルにあわせて効果を自動で最適化する「アダプティブ・ノイズキャンセリング」機能や、外音取り込み機能「ソーシャルモード」も搭載。これらモードの設定は専用スマホアプリ「Denon Headphones」から行うことができます。
DENON PerL Pro レビューサイト



DENON PerL Pro(AH-C15PL) 各種レビュー・評価から本機の実力を分析・考察
NuraTrue ProをベースにDENONのサウンドを注入?
本機は機能面での内容は同一のNuraTrue Proをベースに、DENONによるサウンドチューニングを施したモデル。NuraとDENONの親会社が同一(SOUND UNITED)ということから、今後はNuraTrue Proの販売を終了し、DENONブランドの本機を販売するという事情のようです。
見た目も機能もNuraTrue Proと同じですが、だからといって、再生音質は異なるようです。また、NuraTrue Pro用のアプリもPerL Proでは使えないようですので、完全に別モデルとして扱う必要があるようです。
ただ、再生音質に関わらない、しかも本機の売りであるサウンドパーソナライズ機能の部分についてはNuraTrue Proと同等かもしれません。断言もできませんし、根拠もありませんが。
本機の再生音質は、サウンドパーソナライズ機能ありき?
本機の再生音質は、サウンドパーソナライズ機能ありきで評価するべきもののようです。サウンドパーソナライズ機能なしの音質は、価格に見合わないたいしたものではない、とくに魅力的ではないといった評価が並びますが、サウンドパーソナライズ機能で個人に最適化した後の音質は、この価格帯の完全ワイヤレスイヤホンで最高峰などといった賛辞が並びます。
音質の評価はとても高い。DENONサウンドも感じさせる
サウンドパーソナライズ機能適用後の音質の評価はとても高いものがあります。
具体的には音の情報量が増え、ワイドレンジになり、音の艶も増し、音の表情も豊かになるという印象。いわゆるモニター的ではなく、リスニングよりの楽しく音楽鑑賞できるサウンドになるようです。低音がしっかりある一方、高域は聴き疲れしにくいようで、サウンドパーソナライズ後の音質にはDENONのサウンドテイストが加わっているのかもしれません。
NuraTrue Proと比較している人もおり、サウンドパーソナライズ機能適用後の音質は異なっているとのこと。NuraTrue Proよりも音の実体感が強く、やや高域を弱めているようで、やはり伝統的なDENONサウンドのチューニングも感じさせるようです。
イコライザーも効果的
サウンドパーソナライズ後の音質に気に入らない点があっても、さらにイコライジングをできるので、好みが明確で調整できる自信があるなら、イコライザーをさらにいじるといいようです。
空間オーディオの評価も高く、イヤホンながら広い音場を楽しめる
空間オーディオの評価も高く、イヤホンながら広い音場を楽しめるようです。
マイナーな存在だったNuraTrue Proも、サウンドパーソナライズ機能実施後の音質は同様に好評だったので、驚くことではないかもしれません。
やはり、サウンドパーソナライズ機能の威力は凄いようです。ただ、オーディオ機器にあらゆるイコライジングを嫌う人が一定数いるので、そのような人にとっては本機は受け容れがたい存在でしょう。そういう人はスルーすることになるのでしょう。
イコライジングやキャリブレーションで音質が良くなるなら、活用したいという向きのユーザーに適している製品でしょう。
ANC性能や装着感についてはそれほど高い評価ではない
ANC性能や装着感、通話性能などについては特筆できるものはなく、それほど高い評価ではないようです。推奨装着感がややきつめ、という声も複数見られました。バッテリー持ちが悪いという評価もあります。
はっきり言って、高音質特化型機であり、再生音質以外の面についてはおまけと言えるのでしょう。これはDENONに限ったことではなく、他社の高額な完全ワイヤレスイヤホンにもよく見られることです。
間違ってもANC性能目当てに買わないほうがいいようではあります。
aptX系高品位コーデックを利用できるユーザー向け
クアルコムの“Snapdragon Sound”に対応し、aptX Lossless(44.1kHz/16bitロスレス)、aptX Adaptive(最大96kHz/24bit)、aptX Voice(マイク音声を最大32kHzでスマホに伝送)や低遅延(最小48ms)などハイスペックですが、基本的にaptX系のハイスペックです。
LDACには対応していませんし、aptX系のハイスペック送信ができるスマホなどとの組み合わせがベターでしょう。AACやSBCではいっきに音質が下がるようですし、LDAC派では本機の高音質は生かせないかもしれません。
実売価格の低下によるコストパフォーマンス評価の変遷
本機は発売当初は5万円以上の実売価格からはじまりました。その価格だと完全ワイヤレスイヤホンとしてはかなり高価であり、いわゆる完全ワイヤレスイヤホンのマニアや高度なポータブルオーディオの愛好家向けという面が強いと言わざるを得ませんでした。ただ、その価格でも絶対的な音質の良さは評価されており、さすがデノンと言えるような仕上がりのようです。
その後、実売価格は下がり続け、2024年前半には4万円程度、2024年半ば過ぎには一時的に3万円程度になるなどしています。この価格なら音質面での評価が高いこともあり、買ってみたいという人も増えており、当初より安く買った人たちからすると絶対的な音質の良さと、コストパフォーマンスの高さを評価する向きも増えています。
2024年のブラックフライデーセールでついに約21,500円の安さに!
そして、2024年のブラックフライデーセールの時期にはAmazonを中心に、なんと約21,500円という破格の安さになり、幅広いユーザーも含めていっきに注目を集めています。
この価格だと本機の高音質のメリットが大きく生き、それ以外のデメリット(定価を考慮すると機能性や性能が低いなど)が払拭され、とにかくコストパフォーマンスの高い高音質完全ワイヤレスイヤホンとして評価されているようです。
それでも、基本的な音質の好み、キャリブレーション前提という特有のあり方、装着性や機能性など、価格にかかわらず人によっては妥協できないことはあると思いますので、価格だけにつられずに、しっかりと見極めたいところです。
これだけ安くなっているということは、メーカーが思っていたほど売れなかった、販売終了が近い、後継機導入も近いなどといったネガティブな要素も考えられますし。
とはいえ、高音質な完全ワイヤレスイヤホンとしての評価は確かなものですので、完全ワイヤレスイヤホンやポータブルオーディオ愛好家は一台持っておいて損はないと言えそうです。
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