iFi audio Go bar 剣聖とは
製品概要
iFi audio Go bar 剣聖は、2024年3月27日に発売されたドングル型のUSB-DACヘッドホンアンプです。小売価格は85,800円(税込)。
ドングル型DACとしては高級クラスに位置しており、オーディオマニアや音質にこだわりを持つユーザーに向けたプレミアムなドングル型DACとなっています。この製品は、モバイルデバイスを利用した高品質なサウンド体験を可能にするドングル型DACとして設計されています。
銀色の筐体にヘアライン加工が施され、ステンレス材を使用しており、その高剛性によって外部ノイズからの保護能力が高められています。外観の高級感もポイントです。
最大の特徴は、「K2 HDテクノロジー」の搭載
iFi audio Go bar 剣聖の最大の特徴は、「K2 HDテクノロジー」を搭載している点です。この技術により、デジタル化過程で失われた高調波や微小信号を取り戻し、192kHz/24bitまでアップスケールし、オーディオ信号の質を向上させます。この技術は、JVCケンウッドのサウンドエンジニアがオリジナルマスターとサブマスターを比較し、細部にわたり高調波の復元に成功した成果です。なお、「K2 HDテクノロジー」は株式会社JVCケンウッドの商標技術を使用しています。
CD時代に、16bit/44.1kHzという自然界の音には音の細やかさも高周波も不足している規格の穴を埋めるべく、失われた高調波や微小信号を復元するプロセッサーが複数、日本のオーディオメーカーから登場しました。先鞭を付けたのはDENONのアルファ・プロセッシングで、そのほか、K2 HDテクノロジーやHi-bit レガートリンクコンバージョン(パイオニア)、などがあります。
これらのプロセッサーは据え置き機で搭載されていることが多く、ポータブル機への搭載の例はあまりありません(当のJVCケンウッドはBluetoothイヤホンに搭載しています)。
ドングル型DACへのこうしたハイレゾ化プロセッサーの搭載はおそらく本機がはじめてであり、この点からiFi audio Go bar 剣聖は大いに注目できます。
32bit Cirrus Logic DACチップセットを搭載したUSB-DAC
iFi audio Go bar 剣聖は、スマートフォンやその他のデバイスに接続するためのUSB Type-C端子を備えており、汎用性の高いバスパワー型USB-DACとして動作します。また、付属ケーブルを差し替えることでAndroidとiPhone両方に対応可能です。
この製品の心臓部には、32bitのCirrus Logic DACチップセットが搭載されています。この高性能なDACチップにより、細部まで精密なサウンドの処理が可能となり、音楽を豊かでクリアなサウンドステージで楽しむことができます。PCM32bit/384kHz、DSD256、MQAフルデコードといったハイレゾデジタルオーディオフォーマットに対応しています。
デュアルモノチャンネル出力段を持つバランス設計とヘッドホンアンプ部
デュアルモノチャンネル出力段を持つバランス設計は、Go bar 剣聖のもう一つの特長です。この設計により、左右独立した信号処理が可能となり、相互干渉を最小限に抑えます。その結果、より精緻でバランスの取れたステレオイメージを実現し、リスナーに空間的な深みと広がりを与える音場を提供します。
更に、この製品は4.4mmバランス駆動用端子と一般的な3.5mmヘッドホン端子の2系統を備えており、さまざまなイヤホンやヘッドホンとの相性も良好です。出力(バランス)は477mW(32Ω)、7.5V(600Ω)。600Ωのハイインピーダンスヘッドホンも駆動できます。
イヤホンのインピーダンスや感度に合わせて出力を調整できる「IE Match」という機能も搭載されており、幅広いオーディオ環境で最適なリスニング体験を提供します。
また、4種類のデジタルフィルター、XBass+、XSpaceアナログ処理モード によって、音質をさまざまに変化させて楽しめるのも特徴です。
ステンレス製の筐体
Go bar 剣聖の筐体は、ステンレス製で作られており、堅牢な設計が特徴です。この筐体は、精密なボリュームコントロールとフォーマット/サンプルレート表示LEDを備えており、使い勝手の良さと耐久性を兼ね備えています。付属のレザーケース、竹の稈の模様を生かし、装飾を施した化粧箱と合わせて、日常の使用はもちろん、持ち運びにも便利です。
付属品として、ケース、化粧箱のほか、USB-C OTGケーブル、USB-C -> USB-Aアダプターも含まれています。
これらの特徴と機能により、iFi audio Go bar 剣聖は高品質なサウンドを求めるユーザーにとって理想的な選択肢となるでしょう。
iFi audio Go bar 剣聖 仕様
入力: USB-C
対応フォーマット: PCM 44.1/48/88.2/96/176.4/192/352.8/384kHz
DSD 2.8/3.1/5.6/6.1/11.2/12.3MHz
MQAフルデコード
DAC: Bit-Perfect DSD & DXD DAC
ヘッドフォン出力
バランス出力: 4.4mm
S-Balanced出力: 3.5mm
出力パワー(RMS)
バランス: 477mW@32Ω; 7.2V@600Ω
シングルエンド: 300mW@32Ω; 3.8V@600Ω
S/N比
バランス: 132dBA
シングルエンド: 121dBA
THD+N
バランス: <0.0025% (6.5mW/2.0V @ 600Ω)
シングルエンド: <0.009% (100mW/1.27V @ 16Ω)
周波数特性: 20Hz – 70kHz(-3dB)
消費電力: 最大4W
サイズ: 65 x 22 x 13.2 mm
重量: 65.5g
小売価格: 85,800円(税込)
iFi audio Go bar 剣聖 レビューサイト

各種レビュー・評価を分析・考察
肯定的な評価
iFi audio Go bar 剣聖に対する肯定的な評価はその高品質なサウンドに集約されます。多くのリスナーは、このドングル型DACが提供する音の明瞭さと細部の再現性の両立に高い満足を表しています。特に「K2 HDテクノロジー」によって復元された微小信号と高調波のおかげで、CD品位のデジタル音源でもアナログに近い温かみと深みを感じることができると評価されています。
また、イヤホンのインピーダンスや感度を考慮して出力を調節できるIE Match機能は、幅広い種類のイヤホンとの相性を格段に向上させると高く評価されています。とくに高能率イヤホンでのボリューム調整のしやすさや、ホワイトノイズの少なさが実感できるメリットとして挙げられています。
バランス駆動用端子と一般的なヘッドホン端子の2系統が備わっている点も、高い柔軟性と利便性を提供するとして好評です。
ドングル型DACとしては特筆できる音質のよさから、本機を小型の据え置き型DAC/ヘッドホンアンプとしても使えるという評価もあります。
否定的な評価
一方で、iFi audio Go bar 剣聖に対する否定的な評価も存在します。その中心となるのが、85,800円(税込)という価格です。なかでは、いわゆるドングル型DACのなかではかなり高価であるため、価格に見合った価値があるかどうか慎重に検討する必要があるという意見が散見されます。
また、筐体が高剛性ステンレス材であることから、65gと予想以上に重量感があり、一部のユーザーからは持ち運びの際の携帯性に関する懸念も出ています。さらに、スマートフォンとの接続にUSB Type-C端子を使用することは現代的で便利ですが、付属ケーブルの差し替えが必要であることから、ケーブルの紛失や破損に対する心配も指摘されています。
音質重視設計のドングル型DACでありがちな、接続機器のバッテリーの消費が大きいというデメリットも否定的な評価の要因のひとつです。
音質を変更できる機能性についても、あまり変化を感じないとか、音が不自然になるので使いにくいといった意見もあります。
iFi audio Go bar 剣聖の購入を検討する際のポイント
価格と性能のバランス
Go bar剣聖は、85,800円(税込)という価格で提供されます。この価格帯で提供されるドングル型DACとしては、特に高品質なオーディオ体験を求めるユーザーにとって魅力的な選択肢です。
特に「K2 HDテクノロジー」を搭載しており、デジタル化過程で失われる高調波を取り戻すことができる点は大きな特徴です。音質に関して厳しい基準を持つ音楽愛好家や、プロフェッショナルな使用を考えている方には、この技術は高価格ながらも十分な価値があると評価できます。
しかしながら、一般的なリスナーやカジュアルな音楽愛好家にとっては、85,800円は少々高価に感じられるかもしれません。その場合、性能と価格のバランスをしっかりと考慮する必要があります。高剛性ステンレス筐体による外部ノイズからの保護や、多用途に対応する豊富な機能を十分に活用できるかどうかを見極めることが大切です。
「K2 HDテクノロジー」は基本的にPCM系音源に対してのみ有効であること、効果が大きいのはCD品位のような非ハイレゾソースであることがあります。普段聴くのがDSD系のハイレゾばかりというユーザーにはあまり恩恵がないことは考慮しましょう。
使用目的との相性
Go bar剣聖を選択する際に考慮するべきもう一つの重要なポイントは、使用目的との相性です。本製品は、バランス駆動用端子と通常のヘッドホン端子を備えるなど、音質の最適化を追及しており、特にオーディオ品質にこだわるユーザーにとっては理想的な選択です。また、「IE Match」機能によって、イヤホンのインピーダンスや感度に応じた最良の出力調整が可能ですので、様々なイヤホンやヘッドフォンに適応する柔軟性を持っています。
ただ、高性能化・高音質化の代償として、本体重量の増加、バッテリー持ちの悪さというマイナス面があります。スマホと組み合わせて長時間リスニングを軽快に楽しみたいという向きには、もっと小型・軽量で、バッテリー消費の少ない他モデルのほうが向いているかもしれません。
主に移動中の使用や、簡単な音楽鑑賞を目的としているユーザーにとっては、Go bar剣聖の全ての機能を日常的に活用することは少ないかもしれません。その場合、よりシンプルかつ低価格なオプションも検討の余地があります(iFi audioの場合、下位モデルのGo barがあります)。高性能を活かして、据え置き使用とモバイル用途の兼用で使えれば合理的かもしれません。
使用目的と自分の聴きたい音楽の種類を明確にし、それらとGo bar剣聖がどの程度マッチするかをしっかりと評価することが購入の鍵を握ります。
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